タイトルからして洒落てる、だけどかなしい小説

わたしは江國香織が好きです。
はじめて読んだ彼女の作品である「きらきらひかる」も、人を突き放しっぱなしの「落下する夕方」も、彼女の性格が垣間見える「泣かない子供」も。好きな作品ばかりです。

江國先生の作品は、タイトルが洒落てるものが多いです。
きらきらひかる」「落下する夕方」「泣かない子供」「泣く大人」「号泣する準備はできていた」
こうして適当に選んだ作品のタイトルを並べてみただけでも、すごく洒落てて目と耳に残るのがわかります。

そして、今回読んだ「こうばしい日々」もその一つ。


小学五年生の少年の苦くて甘い日常

本のタイトルにもなっている「こうばしい日々」は、米国生まれで米国在住の小学五年生の少年の日常を描いたものです。

ガールフレンドとのくすぐったい恋模様や、彼女との仲をからかわれたことで起きるぎすぎすした出来事、優しい食堂のおばさんのささやかな秘密、日本好きな大学生の友人の浮き世離れしたいようで俗っぽい佇まい、米国嫌いなのに典型的なアメリカ人なボーイフレンドがいるお姉ちゃん。

主人公の日常は表面は甘いけれど、少し深く潜ったり軽く脚を踏み外すと苦い味がする部分に触れるはめになる。
とても子供の日常らしいと思った。表面は甘いけど、少し掘ってみるとなんだか苦い。けれど、その苦い部分にも甘いところがあって、子供にとっての人生の味ってこういう感じだろうなと思いました。

子供から大人になりかけている少女のかなしい予感

そして、「綿菓子」というもう一つの話。

江国先生の描く恋愛はとても日常的だと思います。たぶん現実のどこかで似たようなことがあるんだろうな、という感覚。でも、それは現実にあるのだろう、じゃなくて、たぶん現実のどこかで、という類いのものです。現実にはっきりとあるんじゃなくて、現実にありそうだなというもの。現実の味に非常に近い味わいを感じさせるもの。

綿菓子のラストは、かなしいです。主人公は幸福そうだけれど、読んでるこちらとしてはかなしくなる。けれど、主人公は確かに恋愛をしている。それがまたどうしようもなくかなしい。

たぶん、どこかであるんだろうな。江国先生は「落下する夕方」といい、こういうのを書くのがうまいな、と思いました。


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